蒼宮の都
「私は華国に仕える藍深と申します。我が主をお助け頂き、ありがとうございます」
青年――藍深はラサの前に立つと、両手を組んで頭を下げた。
「いえ、あの……」
『藍深っ』
ラサが口を開いた瞬間、高い声が響いた。
黎明がこちらに走って来る。
『ラサも一緒に王宮に連れて行くわ、お礼がしたいの。ねぇ、いいでしょう?』
『勿論です』
「ラサ殿、どうかご一緒にいらして下さい」
そう言って、藍深は柔らかな笑をラサに向けた。
華国一行は王宮の東にある離宮に逗留していた。
婚姻の準備には時間がかかるため、暫くはここで暮らす事になる。
通常、他国の花嫁を迎える場合、その従者の数は厳しく制限されることが多い。
そこには花嫁が早く自国の習慣に慣れるようにという建前と、間者となる可能性の高い者を極力入れたくないという本音があるのだが、黎明に限って言えばそれは当てはまらないらしい。
建物を守る衛兵も、周りにいる侍女達も、全て華国の者である。
勿論そんな事情を知る筈もなく、この時のラサは突然降って沸いたような状況に、ただただ圧倒されていた。
青年――藍深はラサの前に立つと、両手を組んで頭を下げた。
「いえ、あの……」
『藍深っ』
ラサが口を開いた瞬間、高い声が響いた。
黎明がこちらに走って来る。
『ラサも一緒に王宮に連れて行くわ、お礼がしたいの。ねぇ、いいでしょう?』
『勿論です』
「ラサ殿、どうかご一緒にいらして下さい」
そう言って、藍深は柔らかな笑をラサに向けた。
華国一行は王宮の東にある離宮に逗留していた。
婚姻の準備には時間がかかるため、暫くはここで暮らす事になる。
通常、他国の花嫁を迎える場合、その従者の数は厳しく制限されることが多い。
そこには花嫁が早く自国の習慣に慣れるようにという建前と、間者となる可能性の高い者を極力入れたくないという本音があるのだが、黎明に限って言えばそれは当てはまらないらしい。
建物を守る衛兵も、周りにいる侍女達も、全て華国の者である。
勿論そんな事情を知る筈もなく、この時のラサは突然降って沸いたような状況に、ただただ圧倒されていた。