涙のあとの笑顔
 真剣な表情に声。未だに涙を流したまま、じっと見つめると、彼も同じように見つめた。沈黙を破ったのはケヴィン。

「目を閉じて」

 素直に従うと、彼の唇が触れた。抵抗なんてない。
 やっぱりあなたのことが好き。
 裏切られて嫌いになろうと、憎もうとしたけど、どうしても私はできなかった。
 ケヴィンだってとても大切な存在だから。
 ぎゅっと背にしがみつくと、ケヴィンはもう離さないとばかりに力強く抱きしめた。
 翌朝、レイバンお兄ちゃんと会い、昨日のことについて詳しく聞いた。家族に危害を加えた者が数人の村人達と手を組んだ盗賊だった。金銭的な問題を抱えていたらしく、盗みを働こうとしていたようだ。無理矢理金目のものを盗み、逃げようとしたところをお兄ちゃんに見つかり、標的にしたのだ。
 犯人がわかったお兄ちゃんは怒りをあらわにしていた。
 そして今回、王都を狙ったのは開くまで私を誘き寄せて、傷つけることが一番の目的だった。最初から最後まであの女に操られたままの彼らはもはや人間とは思えなかった。
 話が終わったので、ケヴィンのところまで戻った。イーディも一緒にいるはずだから。

「ケヴィン、具合はどう?」
「いいよ、フローラは?」
「私も。イーディ、目とその痣、大丈夫?」

 これもあとから聞いたが、外に出ていたイーディは村人達が暴れていることを城の者達に伝えようとしたときに突き飛ばされて、できたものだ。そのとき砂が目に入ったが、異常はなかった。両目を失ったら、本当に暗闇の中だとイーディは思っていた。

「どっちも大丈夫よ。痣は少し嫌な色をしているけど、すぐに治るわ」

 笑顔で返答してくれたので、私も笑顔になった。

「ところで・・・・・・」

 きつくケヴィンを睨んでいる。

「朝、心配で急いできたのに、寝ているフローラに抱きついていたの?」

 怒っている、確実に怒っている。

「こんなときまで説教はうんざり」
「それを言うなら、大人しく寝ていて」
「もう完治したよ?」
「そんな嘘を吐かないで!まだ触ったら痛むでしょ!?」
「フローラ、フルーツを取ってくれる?」
「うん」
「ちょっと私を無視しないでよ!」
「それだけ騒げるなら元気な証拠。俺達はずっと戦っていたんだよ?」

 するとイーディは顔を曇らせ、俯いた。

「そんなこと、わかっているわよ・・・・・・」
「イーディ?」
「私、私は魔法なんて使えないし、武器も使えない。けど、それでも誰かの力に・・・・・・」
< 112 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop