涙のあとの笑顔
誕生日と笑顔
 鏡で姿を確認してから、城を出て、待ち合わせ場所へ行くと、ケヴィンは待っていた。
 
「ケヴィン、お待たせ」
「フローラ、可愛い」
「この服、イーディが貸してくれたの」
「そうなの?」
「うん。一回しか着ていないからほとんど新品と同じ」

 そう本人が言っていた。この服を私にくれようとしたが、こんな高そうな服は着慣れていないからとやんわりと断った。

「寒くない?」
「うん、ケヴィンは?」
「手が少し寒いな」

 手を繋いで、フローラ。
 こんな感じでケヴィンは私に甘えている。
 前にたくさん触れる理由を教えてもらったとき、見ることや聞くことなども安心するけど、触れることがより安心できるみたいだ。
 今日のケヴィンの手は少し温かい。

「これから何か食べるの?」
「そうだよ、とても綺麗なところ」

 その場所へ行くことが出来ることにとてもわくわくしていた。

「楽しみね」
「料理もとても美味しいから期待していて」
「ふふっ、早く連れて行って」
「じゃあ、案内するね」

 着いた先は王都の高級レストランだった。天井が高く、シャンデリアが煌びやかでテーブル席のまわりが水色のライトが光っていて、幻想的な空間を演出している。

「どう?」
「素敵・・・・・・」
「でしょ?」
「いいの?こんな素敵なところで祝ってもらえて・・・・・・」
「そのためにこうしたんだよ。何も心配なんていらないからね」

 コース料理を頼み、次々と料理が運ばれる。

「美味しい!」
「でしょ?俺もこの店の味が好きなんだ」

 こんなに美味しい贅沢、滅多にない。魚にかかっているソースも相性がいい。

「俺がいない間、退屈じゃなかった?」
「うん、イーディや他の人達が誕生日を祝ってくれたし、いろいろと話をしていたから」

 退屈ではなかったけど、寂しかった。それは本人には内緒。

「本当は一日中フローラを独占する予定だったけど、イーディが猛反対してきて・・・・・・」

 メイドさん達が二人のことを怖がりながら話していたもの。どこでかは知らないが、相当長い時間かけて喧嘩をしていたようだ。
 ケヴィンは思い出しながら、頭を押さえている。

「で、でも仲直りをしたよね?」
「俺が夜から独占することで何とか・・・・・・」

 ケヴィンにとっては思い出したくないことだよね。
 何か別の話題はないかといくつかのキーワードの中から選ぼうとした。
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