涙のあとの笑顔
「これでもう大丈夫」
「すごい!もう痛くない!」
「歩ける?」
「はい、ありがとうございます!」
「いえ」

 後方から小さな拍手が聞こえた。

「やるね、フローラ」
「それほどでもないよ」
「だって、俺はできない」
「あの!」

 女の子が声を大きくして話しかけてきた。

「何?どうしたの?」
「何かお返しをさせてください!」

 時間があるかどうか確認された。

「私達、これから昼食を食べに行くところなの。でも、ここは飲食店が多いから、どこにしようかまだ決めていないの」
「それでしたら、私の店に来ませんか?」

 店の場所はここからそれほど遠くないらしい。

「どうする?」
「いいんじゃない?そこにしよう」
「じゃあ、案内をお願いね。えっと・・・・・・」

 なんて呼ぼうかと考えていると、女の子はすぐに察してくれた。

「ステラ・ホワイトといいます。十六歳になったばかりです!」
「私はフローラ・モーガン。十八歳だよ。こっちがケヴィンで、こっちがイーディ」
「よろしくお願いします!それではついてきてください」

 ステラに案内されたところはお洒落なレストランだった。緑に囲まれていて、温かみがあって、居心地がよく、リラックスできる。
 私達は窓際の席に座り、店内をじっくりと見た。

「広々としているね」
「本当だね。落ち着く」
「はい、メニュー」

 ケヴィンにテーブルの上に置いてあったメニューを渡された。二冊置いてあり、私とイーディで一冊を見た。

「いろいろあるね」
「どれも美味しそう」

 メニューがかなり豊富で、写真がついていたからとても見やすく、食欲をそそられる。
 選ぶのに少しだけ時間がかかった。

「フローラ、決まった?」
「うん、決めたよ」

 本当はいろいろなものを食べてみたいけど、それは機会があるときに。

「私も決めたわ」

 ケヴィンはまだ少し迷っていた。

「ちょっとだけ待ってね。えっと、これにしようかな」
「すいません」

 店員が気づいたが、ステラが先にテーブルまで来た。頼むとステラは復唱して頭を下げて去って行った。

「イーディっていつも香水をつけているの?」
「いいえ。たまによ。今日買ったものはそれほど香りがきつくないの。ほら」

 手首を私の鼻に近づけると、甘く優しい香りがした。

「良い香り」
「これなら周りを不愉快にしないでしょ?」
「うん」

 素直に頷いて、返事をした。

「メイドの中できつい香水をつけている人がいるからやめてほしい」
「ケヴィン、注意をしないの?」
「相手にしていられない」

 香りが強いから、そういう人に近づきたいと思っていない。

「一部の人間がたくさんつけているの」
「フローラはいつもいい香りがするね。香水をつけていないのに・・・・・・」
「いつも髪を鼻の近くに持っていくよね。この間だって、いきなり部屋に入ってきたと思ったら、抱きついて髪の匂いを嗅いでいたの」
「だってドアの外から香りが漂ってきたから」

 そんな訳ないでしょう!?どこまで香りが強いのよ!

「ケヴィン、どんな鼻をしているのよ」

 イーディも私も呆れ顔になっていた。

「本当にね」

 料理を待っている間は三人でお喋りをして楽しんでいた。

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