涙のあとの笑顔
 今日は少し嫌なことがあったけど、気を取り直して買い物をしよう。
 すぐに手紙を買って、階段を上っていくと、何やら賑やかな声に包まれている。
 どうしたのかな?今日はイベントでもあったっけ?
 歩いていくと、ステラの店が長蛇の列で並んでいる。近くの人に理由を教えてもらおう。

「あの、今日なんでこんなに並んでいるのですか?」
「前にこの店の人が取材を受けていて、それを知った人達がこうして食べに来ているんだよ。どれだけ美味しいのか知るためにね」
「そうだったんですか」

 遠くから店を覗くと、店の人達は忙しそうに店内を動き回っている。

「ステラ!」

 飲み物を運んでいるステラを発見した。向こうも気づいて笑っていたが、足を引っ掛けて転んでしまった。

「ありゃりゃ、やっちゃったね」

 私は無意識に店の中へ入っていた。

「ステラ、大丈夫?」
「フローラお姉ちゃん、飲み物を台無しにしちゃった・・・・・・」
「私も手伝う」
「でも・・・・・・」
「待たせたら駄目でしょ!」

 ステラにエプロンを借りて、床を掃除した。ステラは新しく飲み物を入れて、持って行った。
 それから数時間、店の手伝いをした。

「ありがとう、お姉ちゃん。本当に助かった」
「さすがに疲れた」
「今日ね、いつも働いてくれている人がたまたま三人も抜けていて、大変だったよ」
「店の手伝いをしてくれてありがとう。あなたがフローラね」
「はい、えっと・・・・・・」
「お母さんだよ!」

 疲れた顔をしていた。慌てて笑顔で挨拶をした。

「はじめまして、フローラ・モーガンといいます」
「はじめまして。今日もありがとう。これ、どうぞ」
「いいんですか?」
「もちろん。遠慮しないで」
「何だか、いつもお姉ちゃんに助けてもらっているね」
「そんなことないよ」

 アイスティーを飲みながら言った。

「そうだ、手紙を送ってくれてありがとう」
「無事に届いてよかった」
「返事はこれから書くからもう少しだけ待っていて」

 ステラは笑顔で頷いた。

「今日はフローラお姉ちゃん、一人なの?」
「うん、そうだよ。手紙を買うために来たの」
「そうだったの」

 それからしばらくの間、時間を忘れてステラと楽しく喋っていた。
 内容は学校のことや店のこと、好みのもの、家族のことなど、他にもいくつもある。

「もうこんな時間!そろそろ戻らないと!」
「私、送るよ!」
「気持ちはありがたいけど、いいよ。外が少し暗いし、危ないから」
「いいの?」
「うん。それに武器を持っているから」

 ステラは渋々ながら頷き、店の外まで送ってくれた。

「じゃあ、また来るね」
「待っているからね!」

 急いで自分の部屋へ戻ると、誰もいなかったので、安堵の溜息を吐き、荷物を置いて、ベッドに横になった。
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