涙のあとの笑顔
 そんなに幼く見えるのかな。

「仕事のときはきちんと敬語を使うけど、感情的になると、さっきみたいに普段の口調に戻るよね」
「女の子に荒っぽいことをするから・・・・・・」
「じゃあ、食事を再開しよう。今度はちゃんと開けてくれるね」

 彼はすでにスプーンを持って、待ち構えていた。抵抗する気もなくなったので、それからずっと彼に食べさせてもらった。

「ごめんなさい。彼は世話好きなの」

 目尻を下げ、謝るイーディさんに首を横に振った。

「うん。ちゃんと全部食べたね。美味しかった?」
「はい。ありがとうございました」

 お辞儀をしようとすると、口元を指で拭われた。

「お粥、ちょっとついていた」

 そのまま舐めたので、慌てて顔を背けた。

「さて、いくつか質問をしてもいいかな?」
「はい」
「君はどこかへ行くつもりだったの?」
「いえ、あの、家に帰ろうとしたんですけど・・・・・・」

 あまり言葉にはしたくない。でも言わないと。

「なくなっていて・・・・・・」

 彼は顔をしかめて聞いていた。

「その、家を誰かに燃やされていて・・・・・・」
「放火されたってことだよね?他に頼れる人はいないの?」
「誰もいません」

 二人は深刻な顔をして見つめあっていた。

「いろいろ親切にしてくださって、本当にありがとうございました!これ以上迷惑はかけられないので・・・・・・」

 荷物を持って、部屋を出て行こうとしたが、止められた。

「こらこら。何勝手に行こうとしているの?」
「そうですよ。今、出歩いたら危険です。もう夜ですから」
「だけど、いつまでもここにいるわけにはいきません」
「この件に関しては俺が話し合ってみるから」

 話し合う?ここの人とですか?

「今日はここで寝て。もし、怖かったら一緒に寝てあげるよ」

 近づこうとしてきたので、急いで距離を置いた。

「い、いりません!」

 全身真っ赤にして、拒否した。
 何考えているんですか!?年頃の娘に向かって!
 そんな出会ったばかりの方と一緒に寝るなんて、怖いし、恥ずかしいし、頭がいっぱいいっぱいになってしまう!

「ケヴィン様が一番危険な存在ですから。警戒しても無理ありませんよ」
「ひどいな。何も悪いことなんてしないって、約束できるよ」

 笑顔ではあるが、それが本当か嘘なのか判断することができなかった。

「信じてはいけませんよ。嘘を吐くのが得意ですから」

 普段から空気を吸うようにいろいろな人達に嘘を吐いているのかな。
 本当だったらちょっと離れるべきかな。

「イーディ、変なことを言わないで。信じたらどう責任を取ってくれるの?」
「別にどうもしません」
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