涙のあとの笑顔

「どこに！？」
「そ、それがわからないの」

　くしゃりと顔を歪めている。次の瞬間、ステラが信じられないことを言った。

「だからそれを見つけるためにケヴィンさんに協力してもらっているの」

　ケヴィン？どうして彼の名が出てくるの？

「仕事をしているのにどうやって？」
「だから仕事の帰りに少しだけ時間を作ってくれていたの」

　この子、何でケヴィンに頼んだんだろう？私だったらいくらでも時間を作ることができるよ。

「どうして？」
「怒られると思っていえなかったみたいだよ。フローラが怒ると怖いみたい」
「ケヴィン」

　音を立てず、どこからともなく現れた。

「たまたま仕事から戻ったときにステラと会って事情を聞いたから一緒に手伝っていたんだよ」

　何かがおかしい。胸のざわつきが激しい。

「私がこれからこの子の手伝いをするから」
「いいよ、ケヴィンさんに頼んでいるから」
「私、怒っていないよ」
「そうじゃなくて、私、お姉ちゃんに今まで頼り過ぎていたから」

　頼りすぎていた？どういうこと？

「言われたの。甘えてばかりじゃ駄目だって」
「自分一人じゃどうにもならないから・・・・・・」
「最初は一人で行動するつもりだったけど、そのとき魔獣に囲まれちゃったの。そのときもケヴィンさんが助けてくれて・・・・・・そのときに助けた礼として協力させてって言われたの」
「ステラ、周囲の人達の言うことなんて気にする必要はないから」
「二人きりにするのはそんなに嫌？」

　嬉しそうに笑っているけど、いつものケヴィンと違う。

「そうじゃない」
「絶対に見つけるから」

　ケヴィンの表情が気になって仕方がない。嫌な予感がする。

「今日呼んだのはそれを伝えるためなの」
「もう暗くなるから帰ろう」
「ケヴィン・・・・・・」
「見つけたら一番にお姉ちゃんに伝えるからね」

　部屋まで戻って、ケヴィンに話しかけた。

「あの子に何を言ったの？」
「何って？」
「何か言ったんでしょ？でないと、あそこまで私に頼らないわけない」　

　いつも甘えたり頼ってくるのにいきなり態度が変わるなんておかしい。

「さっき、ステラが言っていたじゃない。あの通りだよ？」
「あの通りって・・・・・・」
「実はね、フローラ・・・・・・鍵はもうすでに見つけてあるんだ」

　ケヴィンの手の中にステラの鍵があった。