涙のあとの笑顔
「私は二人の玩具なの?」
「違うわ。でも、小さい頃は好きなものが一緒だったりすると、よく喧嘩をしていた」

 今もよく喧嘩をしているように見えますよ?

「もし、あの頃にフローラがいたら、どうなっていたのかしら?」
「楽しかったらいいな。それに・・・・・・」

 私がもっと前からケヴィンの傍にいれば、何かが変わっていたのかな。
 ケヴィンが誰かを傷つけようとしなかったのかな。 
 私がいても、何もできなかったのかな。
 ケヴィン、どうして私を選んだの?
 今はどうしたらいいのかわからないよ。
 私達が帰ってきてから数十分経過したあとにケヴィンは帰ってきた。お土産を渡すと、お返しとばかりに激しいスキンシップをされた。
 イーディが今日したことをケヴィンに言うと、不満げな顔もしていたが、写真という言葉を聞いて、うっすらと笑みを浮かべたのを私はばっちりと見てしまった。
 数日後にステラから写真をもらい、私だけが写っている写真はケヴィンのポケットの中にしまわれた。イーディと一緒になって彼を追いかけたが、おちょくるように逃げて行った。
 そのこともケヴィンが来る前にきちんと日記に書き込んだ。

「仕事、疲れた」
「もっと働きなさいよ」
「イーディ、邪魔。フローラはここ」

 ケヴィンは相変わらず、私を少しでも近くにいさせようとする。私は警戒するが、それすらも見ていていい気分になるみたい。

「それが年上に対する態度なの!?」
「ちょっと上だからって偉そうにして」
「写真、そんなに欲しいの?」
「もうもらっているよ」
「何でそんなに・・・・・・」
「本当はさ、俺と一緒に撮っているのも欲しいよ。そうだ、今度撮りに行こうか?」

 私が首を横に振ると、口を窄めて、私の肩に手を置いた。

「フローラ、もう少し自覚してくれないと困るよ」

 自覚って何のことを言っているの?

「俺の恋人だっていうこと」
「それはケヴィンの一方通行でしょ!?」
「イーディ、もう少し俺を喜ばすことを言えないの?口が開けば怒ってばかり」

 私がイーディを宥めに行こうとすると、ケヴィンは必ず邪魔をする。そんな彼に何を言っても無駄なことはもう前から知っている。
 恋人と言われても、素直に甘えることなんてできない。それは私がもともと甘えることをしないからでもあるが、ケヴィンと戦って以来、さらにそれは強くなった。
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