涙のあとの笑顔
 その一言で警鐘が鳴り始めた。
 こ、来ないで!あのときの再現じゃない!
 回転させられ、立っている位置が逆になり、そのまま前進してくるので、後退するしかなかった。そうしていると、足がベッドに当たり、そのまま倒れると、レナードが覆い被さってきた。

「何をするの?」
「何をしようか?怖いことをしようか?それとも・・・・・・」

 それとも何?恐怖心を煽るためにわざと口を閉ざしたのだろうけど、性質が悪い!
 とにかくこの人を部屋から追い出さなくては!いつまで経っても寝ることができないよ!

「それでどうする気だ?」
「何も言っていない!」
「少し黙れ」
「あ!」

 額に口づけ、そのまま両腕で抱きしめた。氷のように動かなくなったフローラの耳に唇を寄せた。

「何で急に固まるんだ?お嬢ちゃんも抱きしめろよ。いつまでもこのままだぜ?」

 急かしてくるので、腕をレナードの背に回した。

「いい香りだな。疲れが取れる」

 私の髪に顔をうずめて今にも寝てしまいそうなので、慌てて声を上げた。

「何?耳元で騒ぐな」
「ここで寝ないで!ケヴィン達に見つかる!」
「そうだよな。朝になればあいつらが必ず来るな。どんな反応をするのか楽しみだな」

 やめて!それは楽しみにすることじゃない!絶対に怒り狂って何かするよ!
 ひょっとしたら、怪我だけでは済まないようなことをやらかすかもしれない!
 有り得ることなので全然笑えない。

「どんな朝を迎えるのだろうな?」
「大変なことになるから!」
「嬉しいな。そんなに俺のことを心配してくれるなんて」
「本当に何をするかわからないから帰って!」
「問題ないな。おやすみ」
「だから寝ないで!」

 何度も揺すって起こすという行為を繰り返し、疲労感が彼のせいで増した。
 次の朝にはテーブルにメモが置いてあったので読んでみた。

「えっと、お嬢ちゃん、昨夜はご馳走様・・・・・・。ご馳走様!?」

 何、何をしたの?これはどういう意味!?
 昔は起こそうと少し触れただけでまるで襲われたかのように悲鳴を上げて私をからかっていた。
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