涙のあとの笑顔
 この人は彼の性格を利用して、甘いものが食べたい、温かい料理が食べたいと要求して、とても犯罪者(私は冤罪)に出すとは思えないようなものまで出されたことが何度もあった。

「何かを持って来る度に手ががくがくと震えていたよ」

 内心、何回も落とすだろうと考えていたけど、一回も落とすことはなかった。

「俺が目を合わせようとすれば、さっと顔を背けて逃げたな。あれは傑作だった」

 レナードは思い出して笑っていた。

「あのときレナードは不良で名が知れ渡っていたのね」

 未成年にもかかわらず、飲酒を繰り返していたことも加え、喧嘩がとても強いから悪名として人々から恐れられるようになった。
 昔から女性にもてていて、欲しい情報があるときは女性が喜ぶようなことを言いながら、情報をうまく引き出していたと聞いた。
 今もやっているのだろうな。
 彼は人の緊張を解きほぐすこともできるから、やりやすいはずだ。

「あのさ、半年以上前になるけど、私の家が全焼されたことを知っている?」
「もちろん知っているぜ。何?それに関する情報が欲しいのか?」
「あれば」
「ある。知りたいか?」

 当たり前だよ。あるならもっと早く聞きたかった。

「教えて」
「火事になる前にあんたの家の周囲を何度か見に来た奴がいたそうだ。村の他の住民達はそもそもあんたに近づこうとしなかったから、遠くで見ていたようだ。かなり距離があったから性別は判断できなかったようだ」
「火事になる前っていつから?」
「約一週間ほど前だ。それから犯人は実行に移した。中には燃えていることに気づいた者もいたようだが、誤解されて悪者となってしまったあんたに誰かが復讐したのだと思い、そのまま何もしなかったようだ。炎が燃え広がり、こっちにまで被害が出ると思ったらしく、途中から消すことにした。これが俺の知っている情報だ」
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