涙のあとの笑顔
「ステラ、誰かと踊った?」
「うん!学園の友達と踊ったよ!恥をかかないように前日まで練習していたの」
「そうなの!私、男性のリードに任せていたよ」
「いいじゃない、楽しければ」
「ステラからいい香りがするな」
「実は少しだけ香水をつけているのです。何かわかりますか?」

 ステラはノアに手首を近づけ、答えを待っている。

「フルーツ?」
「当たりです!お気に入りの香水ですよ!」

 爽やかなフルーティーな香りだとノアに説明してから、デザートを置いてあるところを一瞥した。

「フローラお姉ちゃん、デザートはまだ食べていない?」
「うん、まだよ。これが少し残っているから」

 皿の上にある料理をステラに見せた。

「美味しかったよ!お姉ちゃん、何かデザートを持ってくるね!」
「いいの?頼んで」
「うん!ちょうど人は集まっていないから、取るなら今だよ」
「じゃあ、少しだけ入れてくれる?」
「わかった、待っていて!」

 人にぶつかりそうになりながら前に進むステラを見て、少々不安になった。

「あんなに慌てなくてもいいのにな」
「アンディさん!ケヴィン!」
「さっき、ルアナにフローラを連れて行かれたって、不貞腐れていたから」
「そんなことない。それよりルアナは?一緒じゃないの?」
「今はイーディと話しているよ」

 勝手に連れて行ったかと思えば、置いてけぼりにして、何を考えているんだか。
 彼女の行動はいつだって自分のペースで、ときどきノアがそれに振り回されていることを知っている。

「フローラ、こっちを向け」

 アンディさんに顎を取られ、口元を拭ってくれた。

「ついていた」
「あ、えっと、ありがとうございます」

 顔を上げようとしたとき、ケヴィンと目が合った。少し苛立っている。溜息を吐きかけたとき、ステラがこっちに来るのが見え、頭を再び下げ、その場から離れた。できるだけ二人の距離をあけておきたい。ステラは何とも思っていないが、私が不安でたまらなくなる。

「あ!お姉ちゃん、来てくれたの?」
「うん、またぶつかりそうになっても危ないから」
「見てたの?あ、はい!一緒に食べよう!」
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