何よりも甘く切なく
怒りで体温が上がる中、私はグルッと振り返って泉未に言った。


泉未からは“そうですね”って返事が返って来ると思っていた。


だけど――――…何も話さない。


下を向いて髪がかかっているせいで、顔が見えにくい。


「泉未………?私の声、聞こえてる?」


少し強くなった風で巻き上げられる自分の髪の毛を押さえながら尋ねると、泉未はやっとこっちを見た。


「あっ……すみません、聞こえてます………」


そう言いながらも、泉未の瞳や声からは悔しさが感じられる。


「ねぇ泉未。私大丈夫だからね?」


「………すみません」
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