何よりも甘く切なく
扉を開けてからずっと黙りっぱなしだったオレは、先輩の目を見ないで彼女を呼んだ。


イヤ……『見れなかった』が正しいのか。


「なぁに?泉未」


甘木先輩が机のお弁当箱に左手を添えながら、オレの方を振り返った。


オレは一瞬だけ、キツく目を閉じる。


そしてすぐに開けると、一言だけ言った。




「オレ達…………暫く距離、置きましょう」




「――――……えっ?」


5秒程経って、甘木先輩が震えた声で返した。


チラリと顔を見つめると、“困惑”という言葉がピッタリと当てはまる表情。


「泉未、何、言って……」
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