何よりも甘く切なく
そう言った男の子は、猛ダッシュで庭を抜け、玄関の方へ。


「どうしたんだろう……」


私はなぜ男の子があんなに急いでいるのか分からなくて、家の壁に手を付きながら立ちつつ、ハテナをポワポワ浮かべていた。


右足濡れてるからクツ履けなくて片足立ちなので、壁に手付きなの。


「お待たせ!あっ……こっち来れるかな?」


待つ事2分、庭に面した窓が開き、男の子が家の中から顔を出す。


男の子の傍には白いタオルと救急箱が置いてあった。


「うん」


私は転ばぬ様に、ケンケンをしながら窓に向かった。


「ハイ、タオル」
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