夢を見る
 あるとすれば、不眠症ぐらいなものである。


 大病してない分、小さな困り事はたくさんあった。


 例えば、慢性的な低血圧がある。


 鉄分が不足しているのだ。


 本当なら根本的に食事を見直すとか、アイアンなどのサプリメントを飲めばいいのだが、そこまでは手が回らない。


 週に一度、ドラッグストアに買い物に出かけるのだが、さすがに店員もあまり真摯に対応してくれないのが実情である。


 そこのところに関しては諦めていた。


 立ちくらみ――特に夏場襲ってくる類のものだが――さえ堪えられれば、いいのだから……。


 朝食を作り終わり、料理を盛った皿を並べていると、彼がやっと起きてきた。


「おはよう」


「……ああ、おはよう。眠いな」
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