夢を見る
「狡猾だな。あれがコンツェルンを名乗る財閥のやり方だったとは」


 瀬岡も胃が痛いようで、胃部を擦りながら、あたしと話をしていた。


「姫沢社長が仰ってた。『あの取引は最初からうちを巻き込む手筈だったんだな』と」


「ええ、その通りです。我々は騙されました。ものの見事なまでに」


 さすがに口にするのは簡単だが、これから先どうなるのだろうと思える。


 もっと株取引の勉強をしておけば、成川のたくらみに引っ掛からずに済んだのだけれど……。


 そしてその日の午後、成川陽一が市場における不当な株の買い占めなどの容疑で検察庁に身柄を拘束された。


 検察庁が組織した東京地検特捜部は追って加賀美コンツェルンに強制捜査に入り、事件に絡んだと思われる幹部ら数名を逮捕したのである。


 以前から特捜は恐ろしい組織だと聞いていたが、まさにその通りだった。
 

 対象となる企業はガサ入れが行われ、身ぐるみはがされたのだ。


 これから先、うちの社も含め、他社も一度落としてしまった信用を回復するまでに相当な時間が掛かるだろう。
< 254 / 815 >

この作品をシェア

pagetop