夢を見る
 皆が口々にそう言って、キーを叩き続ける。


 うちの社もあの事件以来、自社株に関して多少心配があった。


 だけど、気にしても仕方ないのである。


 いつの時代でも株式会社である以上、株価の値上がりや値下がりなどは気に掛けざるを得ない。


 パソコンのキーを叩きながら、そんなことを考え続けていた。


 ずっと試行錯誤していくうちに、見えてくることもある。


 あの事件は正直なところ、ほんの少し引き摺っていたので、現段階で株の件に関し、あまり口にしないようにしていた。


 考えてみれば、社長の姫沢も一代でこの会社を築き上げている。


 ここまで発展するのには、相当な労力が必要なのだった。


 そのことを肝に命じ、ずっとパソコンのキーを叩く。


 玉木たちも実によくやってくれていた。


 送られてきた企画書は一言一句残らず読んでいる。
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