甘え下手
「阿比留さん、スノボとかやらないんですか?」

「俺、寒いの苦手」

「えー、やりましょうよ。すごい楽しいですよ!」

「サーフィンなら昔やってたけど」

「えー、私もボディボードやってみたい! でも夏まで待てないよ~。ボードデビューしましょう!」


阿比留さんがチラッとこっちに視線をよこしてきたから、同意を込めてコクコクとうなずいて見せた。

プッと笑う阿比留さん。


「比奈子ちゃんもボードすんの?」

「去年、私もさーちゃんも航太さんに教えてもらったんです」

「ふーん。航太さん、ね」

「……」


阿比留さんの前で『航太さん』なんて呼んでしまった。

恥ずかしい。


流してくれればいいのに、わざわざリピートするなんて、阿比留さんは意地悪だ。

そして若干、阿比留さんが不機嫌っぽくなった。


さっきはすごく優しく笑ってくれたのに、相変わらず阿比留さんの見せる感情はくるくると変わる。
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