甘え下手
「もう阿比留さんに関わるのはやめなさい」

「……ハイ」


バッサリ結論を出されて、それが納得のいくものだったから、私は素直に返事をしてしまった。

戻れない危険な道を行くほど、私には経験も強さもない。


「ついでに恋と勘違いしている憧れにもさっさとピリオドを打ちなさい」

「そ、それは私に恋するなということでありますか……?」


びゅうっと風が強く吹いて秋菜の長い巻き髪をさらう。

鬱陶しそうに目を細めた秋菜は「屋上ランチもそろそろ限界ね」と言った。


気がつけばもう冬がすぐそこまで来ていた。


「比奈子はさ、もっと普通の男子に目を向けなさい。同年代で、女関係も乱れてない普通のオトコ」

「はあ」

「しかも比奈子だけを愛してくれるオトコ」

「はぁ、そんな人いたら嬉しいけど」

「じゃあ、合コンでも企画する?」

「あっ、私、明日からの出張準備しなきゃ~」


話が良からぬ方向に進みそうだったので、さっさと立ち上がってその場から逃げた。
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