甘え下手
「べつに一心不乱になんて仕事してません。参田さんがサボってばっかりいるからでしょー」

「いやいや、俺は仕事ちゃんとこなしてるもん。比奈子ちゃんももう少し肩の力抜いたら?」

「あー、分かるかも。お姉ちゃん、仕事一筋っていうより、根が真面目なんですよね。体育会系だし」

「ぷっ、比奈子ちゃんが?」

「何ですか、その笑い。参田さん私のこと何だと思ってるんですか」

「比奈子ちゃん、短距離走とか似合いそう。猪突猛進って感じ!」


高校時代の部活をズバリ言い当てられてしまったから、私はぐっと黙ってしまった。

代わりに沙綾が「すごい、なんで分かるのー」なんてはしゃいでる。


やっぱり身内を呼んだのは失敗だったか。

参田さんにプライベートな私なんて知られたくもないよ。


盛り上がる二人を横目に枝豆を食べまくっていると、参田さんが「おっ、来たきた。翔馬、こっち!」と大きな声を上げた。

何となくそれにつられてお店の入口の方へ視線をやった。


店員さんを避けてこちらへ歩いてくる長身の男性。

私は彼に見覚えがあった。
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