甘え下手
「沙綾ちゃん?」

「あ、さーちゃんのピアスが航太さんの部屋にあるの見つけちゃって、なんか動揺しちゃったというか……」

「ピアス?」


核心を口にした途端に心臓がものすごくドキドキし始めた。

だけど櫻井室長に動揺した様子はない。


ただ覚えがないというように眉間にシワを寄せて首を傾げた。


「洗面台の棚に入ってたんです。勝手に開けてごめんなさい……」

「えっ、そうなんだ。全然気づかなかったな」

「さーちゃん、航太さんの家に来てるんですね……」


私の言葉に非難の色が含まれていると感じたのか、櫻井室長は慌てて「違うから!」と両手を振って弁明した。


「べつに比奈子ちゃんが思ってるような関係じゃないよ! 沙綾ちゃんに手なんか出したら広哉に殺されるだろ!」


櫻井室長の態度からも、沙綾同様不自然なところはなくて、やっぱりこの二人の間には何もないんだと内心ホッとしていた。


「じゃあ、なんで……」

「沙綾ちゃんが部屋に来たのは1回きりだよ! 前の彼氏と別れる直前、相談受けてたって言っただろ?」

「はい……」
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