甘え下手
だけどその事実を今の状態の阿比留さんに話す気力はなかった。

ここで嫌味でも言われたら、私は笑って流す自信がない。


『そうだよ、お姉ちゃん! ガンバレー』


突然、電波の向こうで聞こえた妹の声に、心臓が凍りついた気がした。


「さーちゃん……?」

『ああ、今沙綾と一緒。沙綾も応援してるってさ』

「……そうですか」

『こっち帰ってきたら、ノロケ報告会でも聞いてやるよ』

「……」

『何黙ってんの?』

「い、いや、阿比留さんとさーちゃんが一緒だって聞いてビックリしちゃって……」

『は? こんな時にまで妹の心配してんの? コイツだっていい年した大人なんだから、そこまで自分の保護下に置かなくてもいいんじゃねえ?』


「いい年ってどういう意味ー!」と沙綾がふざけて抗議してる声が聞こえてきて、阿比留さんが「ハイハイ」とたしなめているのが分かった。
< 158 / 443 >

この作品をシェア

pagetop