甘え下手
***

展示会二日目の次の日は朝から最悪だった。

泣き続けたまぶたはパンパンに腫れてほぼ一重になっており、我ながら別人のような顔つきになってしまった。


アイラインやアイシャドウで少しでも腫れを目立たなくするよう、頑張った。

それでも違和感は拭えないから、コンタクトはやめて眼鏡にした。


そこまですれば櫻井室長だって不自然に思うはずなのに、昨日の今日だからか、眼鏡については何も突っ込んでこなかった。

そしていつもよりも優しく気遣ってくれた気がする。


その優しさだって今はツラいし、最後まで空元気を通せなかった自分は情けないと思う。

「泣かないで偉いね」っていつも航太さんは褒めてくれていたのに。


肝心なところで上手く振る舞えない。


だけど仕事のミスは仕事で取り返すと言ったばかりだったから、私はいつもよりも積極的にセールストークに励んだ。


「百瀬頑張ってるな。今日も楽勝で目標数達成しそうじゃないか」

「はい。頑張りましょう!」

「百瀬は偉いな」


櫻井室長の言葉に、目を伏せたまま微笑んでみせた。
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