甘え下手

「くるしー。沙綾ちゃん、くるしー」

「えー、私お腹ペコペコなのに参田さん満腹とかありえなーい」


店の前に現れた沙綾はこの寒いのに胸元の空いたニットにミニスカといういでたち。

アパレル関係で働くのも大変だなと、思わず同情してしまうほど寒そうだ。


その分、人目は引くけどな。


「ちょ、寒いからとりあどっか適当に入ろうよ！　イタリアンかフレンチ」

「全然適当じゃねえぇぇ」

「ワイン飲みたい！　ねえ、阿比留さん美味しいお店連れて行ってよー」

「ちょ、俺無視？　まさかの空気扱い？」

「ハイハイ、参田さんも連れて行ってあげますからねー」

「……お前ら、ウルサイ」


なんで鯖定食の後にフレンチレストランに行かなきゃいけねえんだ。

バカかこいつら。


結局沙綾の意見を無視して、近くのショットバーに連れて行った。

最初は文句を言っていた沙綾も、マスター特製のカルボナーラを出してもらったらコロリとご機嫌になった。