甘え下手
初対面でこんなにズバズバと失礼なことを言われたことがなくて、半ば茫然としながら抗議の声を上げた。


「私の仕事ぶりも知らないくせに、失礼じゃないですか!?」

「ちょっと、お姉ちゃん。阿比留さん、からかってるだけだよ」

「妹のが大人だな」


そういってまた口の端を上げて意地悪そうに笑う阿比留さんの顔が、だんだんデビルに見えてきた。

サタンの仲間はデビルだったか。


「そんなに仕事に自信あるんだ? イベント担当だったっけ?」

「じ、自信っていうか……」

「今度見に行ってやろうか」


阿比留ファンだったら黄色い歓声を上げて喜びそうなセリフも、今の私にとっては嫌がらせでしかない。

参田さんは「いいよなー。営業は自由にサボれて」なんて見当違いの感想を言ってる始末。


参田さんは十分自由にサボってんじゃん!


「阿比留さん、何飲みます? 生でいいですか?」


気がきく沙綾がさっと店員さんを呼びとめて空気を替えてくれたので、私はこれ以上追い詰められることもなく、ただ自分だけが場の空気を乱した子どものようで、気まずい思いに唇を噛みしめていた。
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