甘え下手
「それよか仁遅くねえ? 便器枕にして寝てんじゃねーだろうな」

「あっ、誤魔化したー。私、あきらめないんだからね!」


そんなやり取りを交わしてる最中にポケットのスマホが着信音を奏でた。

取り出して着信相手を確認すると、自然と眉間にシワが寄った。


「どうしたのー?」

「……もしもし」


いぶかる沙綾を無視してスマホを耳に当てた。


『翔馬くん? 仕事終わった?』

「……終わったけど」

『お疲れさま。最近忙しい?』

「いつも通りだけど。どうしたの優子さん」


用がなきゃわざわざ俺に電話なんてしてこないだろ。

そんな思いを込めて用件を促すと、電波の向こうの相手が、困ったように息を飲むのが分かった。


『あのね、あの……。今度の日曜日は家に食事に来ない? 久しぶりにお義父さんもお義母さんも揃いそうなの』

「ああ、気まずいから俺に同席しろって?」


またしても彼女が息を飲んで固まったのが伝わってきた。
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