甘え下手
お疲れさま会はひたすら参田さんが一人でしゃべって、沙綾がそれにつきあってあげてるって感じだった。

やっぱり沙綾を呼んで正解だったと思う。


他の女の子だったら、阿比留さんのことが気になって、すごいテンションだったに違いない。

沙綾もきっと阿比留さんのこと気になってると思うけど、表に出さずに二人に対して平等なあたりはさすがだ。


モテる女は余裕が違う、そんな感じ。


私はといえば、参田さんは見事に沙綾にしか話しかけないし、阿比留さんは基本無口だしで、しゃべる相手もいなく、ただひたすらビールを飲んで、生春巻きをせっせと口に運んでいた。

もぐもぐと口を動かしながら、チラリと視線を上げて斜め向かいに座る阿比留さんを観察する。


Yシャツの袖をまくってネクタイも緩めてるその姿は、会社にいるときのキチっとした隙のない感じとは違う。

会社にいるときは愛想なさすぎて、まるでサイボーグみたい、なんて思っていた。


まあ、今も愛想があるとは言い難いけど、阿比留さんも普通の人間だったんだなーって再確認……。


「なにか」

「えっ?」

「なにか用? さっきから見てるけど」
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