甘え下手
「俺は男だからいいの! 俺の使命はお前ら二人を無事この家から送り出すことだ!」

「べつに両親いないわけじゃないのに、それこそ大げさだよ……」


呆れ顔でリビングを後にした。

逃げるが勝ちだ。


私は知っている。お兄ちゃんには結婚を約束した彼女がいることを。

私達が心配だからこの家を先に出て行かないことを。


だから結婚の話をされると胸がギュッと苦しくなる。


待たせているお兄ちゃんの彼女さんのことを思うと。

お兄ちゃんの気持ちを思うと。


だけど沙綾の言う通り、阿比留さんとは付き合い始めたばかりでそんな関係にはほど遠い……気がする。

だってもう実家には連れて行かないって阿比留さん言ってたし。


そんな阿比留さんを私の実家に呼んでお兄ちゃんに紹介するのもどうかと思う。

私は今のペースでゆっくり阿比留さんに近づいていけばいいと思ってるのに。


周りはそういう風には見てくれない。

大人の恋って大変だ。
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