甘え下手
お詫びのしかた
本当は沙綾のことが気になるし、阿比留さんに色々言われたダメージで、参田さんと飲んでる気分じゃなかった。

だけどろくに食事もできていないのに、参田さん一人を残すのも気が引けて、私達二人で高級肉をひたすらたいらげた。


しかも結局、阿比留さんは帰ってしまったから、お会計も二人で割り勘。

ああ、参田さんに意地悪しようとしたから、バチが当たったんだ。


「あー、肉とか当分見たくねえ。高い肉ってなんであんなにクドイんだ」

「ですね……」

「ま、展示会の打ち上げだからいっか。でも今度からチーフ呼ぶべきだな。財布として」

「財布としてって……」

「あ、なんなら櫻井室長も誘う?」

「や、やめてくださいってば」

「比奈子ちゃん、櫻井室長のドコが好きなの? 同じフロアにいるけどそんなに接点あるっけ?」

「櫻井室長は……」

「うんうん?」

「って、なんで私が参田さんに恋愛相談しなきゃいけないんですか!」

「えー、いいじゃん。俺、協力するよ?」

「いりません! ってかこの話は忘れてください!!」

「えー、代わりに沙綾ちゃんとの仲取り持ってよ」

「知りません」


参田さんの軽口につーんとそっぽを向いた。

参田さんには教えてあげない。


櫻井室長は……、優しくて、たまにとっても可愛いところもあるんだ。
< 30 / 443 >

この作品をシェア

pagetop