甘え下手
「逆の反応って?」

「沙綾は抱きついてきた」


さすがさーちゃん……なんて感心してる場合じゃなくって。

私がじとっとした目で見つめていることに気づいた阿比留さんは、「ちょっとイライラしてて、そこに女がいたから抱き寄せた」と私が訊いた質問の答えを返してくれた。


そこだけ聞くと到底納得できるものでもなかったけれど、その回答と沙綾が言ってた『付き合う前のこと』というのが正しいのなら、納得できなくもない。

付き合ってからは女の人と遊ばないって約束も……守ってくれていると思うし。


「阿比留さんはどうしてそれでさーちゃんを好きにならなかったんですか?」


純粋に疑問に思って訊いただけだったのに、阿比留さんはコーヒーを吹きそうになった。


「なんだそれ。変なこと訊くね、比奈子ちゃんは」

「だって阿比留さんは前からさーちゃんの気持ちに気づいてたってことですよね?」

「まあ、あんだけアピールされりゃな」


「バカでも気づく」という次に続いたセリフに、さーちゃんは一体どれだけ好き好きオーラを出していたんだろうと、恐ろしくなった。


「比奈子の妹だから。最初から対象外だった」
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