甘え下手
「セ、セクハラは止めてください……!」
こんなところを誰かに見られたら阿比留さんが大変だと思ってキョロキョロしているのに、当の本人は私の反応を楽しむように笑っている。
「これが俺のマンションだったら恋人同士のイチャイチャなのに、会社だと犯罪扱いかー」
「べつに犯罪とか言ってるわけじゃ……」
「セクハラって犯罪じゃねえの? じゃあ比奈子ちゃんはどこまで許してくれる?」
ずいっと顔を近づけられて固まってしまった。
キスされるのかと思って。
予想の通りに阿比留さんの顔が傾けられて近づいてくるから……。
耐えられなくなってパタリとまぶたを下ろしてしまった。
ここ会社なんですけどという思いが強くて、バクバクと鳴る心臓の鼓動は尋常な速さじゃない。
呼吸が苦しくなって、だけど口は閉じているから自然と鼻息が荒くなってしまう。
緊張でぷるぷる震えているのに、一向に阿比留さんの唇が触れる気配はない。
か、からかわれた……!
その事実に気づくとその気になっていた自分が猛烈に恥ずかしくて、バッと下を向いて口を開けて止めていた息を吸い込んだ。
こんなところを誰かに見られたら阿比留さんが大変だと思ってキョロキョロしているのに、当の本人は私の反応を楽しむように笑っている。
「これが俺のマンションだったら恋人同士のイチャイチャなのに、会社だと犯罪扱いかー」
「べつに犯罪とか言ってるわけじゃ……」
「セクハラって犯罪じゃねえの? じゃあ比奈子ちゃんはどこまで許してくれる?」
ずいっと顔を近づけられて固まってしまった。
キスされるのかと思って。
予想の通りに阿比留さんの顔が傾けられて近づいてくるから……。
耐えられなくなってパタリとまぶたを下ろしてしまった。
ここ会社なんですけどという思いが強くて、バクバクと鳴る心臓の鼓動は尋常な速さじゃない。
呼吸が苦しくなって、だけど口は閉じているから自然と鼻息が荒くなってしまう。
緊張でぷるぷる震えているのに、一向に阿比留さんの唇が触れる気配はない。
か、からかわれた……!
その事実に気づくとその気になっていた自分が猛烈に恥ずかしくて、バッと下を向いて口を開けて止めていた息を吸い込んだ。