甘え下手
さーちゃんを連れてきたくなくて、ずっと避けてた阿比留さんのマンション。

久しぶりに入ったそこは、この間来た時とは違って物が散在していた。


阿比留さんてキチンとしたイメージなのに。

珍しいなんて思うほど回数を重ねたわけじゃないけれど、それでも少しの違和感を覚える。


シンクに転がっている空き缶の数にも。


「お酒いっぱい飲んでるんですね」

「ああ、これ? 半分くらいノンアルだから」

「眠れないんですか?」

「そうそう。比奈子ちゃんが抱き枕になってくれないから」


今までは孤独を色んな女の人で紛らわしてきたのかもしれないけれど、私が約束させちゃったからそれもできないはず。

だから阿比留さんは幾多の孤独を感じる夜を過ごしているのかもしれない。


「すみません……」

「はは。冗談なのに何謝ってんの」

「私、さーちゃんがここに入るのが嫌だって思ってたんです。だから来ないようにしてたんです。さーちゃん絶対ついて来るって言うから」


プライドが邪魔して素直になれないのは私だって同じだ。

だから私はちっぽけな自分を阿比留さんに告白した。
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