甘え下手
肌と肌が触れあうことで阿比留さんの体温を直に感じたから。

人肌ってこんなに気持ちがいいものなんだって私は初めて知った。


阿比留さんの身体が熱くなるのを感じてるけど、私の方がきっともっと熱くなってる。

こんな風に知らない自分を知るのは怖いと思う。


だけど阿比留さんが何度もキスして、目を目を合わせて「大丈夫か?」と訊いてくれるから。

私は何度もうなずいて、ただ彼に身を任せていればよかった。


今まで知らなかった恋人同士だからもてる信頼を彼に感じる。

だからもうどうなっちゃってもいいやって思った。


今この瞬間が幸せで、魂まで寄り添っているような錯覚に陥るから、阿比留さんの一番近くに辿りつけた気がした。


「愛してるって言って欲しい?」


その瞬間まで阿比留さんが意地悪なのには変わりないけれど。

それが照れ隠しなのかなって思うと、そんな彼さえもが愛しい。


愛しい。


淡い「好き」じゃなくて阿比留さんが教えてくれたのは「愛しい」って気持ち。
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