甘え下手
「いいです。私が愛してますから」


吐息混じりに答えると阿比留さんは切なげに目を細めた。

熱っぽい視線。


「悪い男に騙されるよ、比奈子ちゃん」

「悪い男の人って阿比留さんのことですか……」

「ウソ。俺が騙されそう」

「私に?」

「だって俺ヤバいくらいに比奈子にハマりそう。つかハマってる」


ふふ、と私は笑った。

それは阿比留さんなりの「愛してる」と同義語なんだと悟って。


嬉しい。


愛してもらえるって実感できて、愛してるって気持ちを伝えることができて。

こんな幸せ知らなかった。


「阿比留さん……」

「いい加減、下の名前で呼んだら?」

「翔馬……さん……」

「ん。なに?」

「私を見つけてくれてありがとう。私を分かってくれてありがとう」

「泣いてんの? 比奈子」
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