甘え下手
明け方に空が白んできた頃にふと目が覚めた。

自分のベッドじゃないから自然に眠りが浅かったんだろう。


目を開けるとすぐに阿比留さんの裸の胸があって、私は寝る前のことを思い出して一人で照れた。

そして、そんなくすぐったい朝は会社に行ってもまだ続いてた。


昨日と同じ服装。

ブラウスにベージュのパンツという目立たない服装だったから、誰も覚えていなかったかもしれない。

それでも不審に思われたくないから、ロッカーに常備してあったオレンジのカーディガンを羽織って、バレッタで髪をまとめた。


これだけでずいぶん印象は違うはず。

更衣室で悪あがきしてる私を知ったら、阿比留さん笑うんだろうな。


阿比留さんのことを思い出すと心があったかくなる。

身体に残る違和感さえもが、昨日のできごとが夢じゃないことの証のような気がして嬉しい。


少し早い朝、周りのデスクに人はいない。

私はいつかと同じようにコンビニで買ってきたベーグルをデスクで食べていた。
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