甘え下手
阿比留さんの家で朝ごはんを作れるように、材料をストックしておきたいな。

なんか同棲してる恋人同士みたいで照れるなあ。


そんなことを考えながらニヤニヤしていた時だった。


「あれ、百瀬?」


不意に声をかけられハッとして振り返ると、そこには通路に櫻井室長が立っていた。

私を不思議そうに見た後、プッと笑って口元を指差す。


「マヨネーズ。ついてるぞ」

「えっ、ウソっ」


慌ててティッシュで口元を拭う。

櫻井室長がこんなに早く出社するなんて思わなかったから、驚きで心臓がバクバクしている。


だけど痛みはない。

阿比留さんのおかげで、私は櫻井室長と顔を合わせても少しずつ胸が痛くならなくなった。


これも阿比留さんが私にくれた魔法だ。


「どうして櫻井室長、こんなに早いんですか?」

「ん? 百瀬が来てるかなって思って」

「え?」

「広哉が心配してたよ」
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