甘え下手
「……阿比留さん?」


誰もいないシーツの上に手を置くと、そこはまだ温かくてさっきまで一緒に寝ていたんだと分かる。

身体を起こすとわずかに開いたドアからは光が漏れていて、阿比留さんがリビングにいるんだと分かった。


やっぱり眠れないのかな。

そばにいれば眠れるって言ってくれたのに。


心配になってすばやく衣服を身につけるとベッドを降りてドアへと向かう。

近づくとボソボソと阿比留さんの声が聞こえてきて、誰かと話してるんだと分かった。


こんな時間に電話?


ドアを薄く開けるとソファに座っている阿比留さんの横顔が見える。

背もたれに身体を預けて、腕で額を隠すように覆って、なんだか疲れているようにも見える。


そして耳には阿比留さんがいつも使ってるスマホ。

電話中ならのこのこ出て行かない方がいいかもしれないと思って、どうしようかその場に立ったまま思案した。


ベッドに戻って待ってようかな。

ここにいたら盗み聞きしているみたいだし。
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