甘え下手
「阿比留さんの気持ち、疑ってるの?」

「違うよ。疑ってなんてない」


そこだけは強く言い切ってぶんぶんと首を振った。

自分が愛されてないなんて不安はない。


阿比留さんは態度で、言葉でいつも私を満たしてくれようとしている。

じゃあどうして私は深夜の電話を受け流せないんだろう。


恋愛初心者だから?

嫉妬深いから?


「比奈子はどうしたいの?」

「分からない……。ただなんかモヤモヤするだけで」

「阿比留さんに訊いてみたら?」

「うーん……」


阿比留さんに訊くのは正直気が進まなかった。

実家に連れて行ってくれない理由を訊いた時と同じになるような気がして。


上手な言葉でかわされてしまったら、私はかなりショックを受けてしまいそうな気がする。

そしたらますます疑心暗鬼に陥りそうで怖かった。
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