甘え下手
それはそっくりそのまま自分への問いかけだった。

今私はどうしたいと思っているんだろう。


「分からないの……。ただ苦しくて」


ギュッと眉根を寄せて辛そうな表情をする優子さんを見て、自分が簡単に踏み込んでいい問題じゃないことに気づいてハッとした。


「あ、す、すみません。私、何も知らないくせに……」


優子さんも我に返ったように、よそいきの柔らかい微笑みを作って小さく首を振った。


「ううん、いいの。こっちこそ突然こんな話をしてごめんなさい。比奈子ちゃんに誤解されたくなくて」

「い、いえ誤解なんて」


してなかった……と完全には言い切れない私は、曖昧に言葉を濁した。

そんな私を気にすることなく優子さんは言葉を続ける。


「翔馬くんは優しいでしょう?」

「……はい」

「いいな。比奈子ちゃんがうらやましいわ」


コーヒーカップのふちをなぞる細い指。

おそらく優子さんの言葉は本心で他意はない。


だけど私は足元をすくい上げられたような気持ちで怖くなった。
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