甘え下手
その声になんでもないフリして、急いで玄関へと入る。
参田さんにはあっという間に見抜かれた私の恋心にも、この鈍感な兄にはちっとも気づかれていないらしい。
「沙綾、どうかしたのか?」
「え、なんで?」
「あんま強くないクセにガンガン飲んでたし、お前、さっき変だったし」
「ちょっと私の友達とモメて……」
「男じゃないだろうな。沙綾に変な男紹介すんなよ」
「……はいはい」
ったく、30にもなってシスコン(沙綾限定)なんだから。
そんなセリフをため息と一緒に噛み殺して、家へ上がった。
「航太も心配してたぞ」
「……」
背中から聞きたくもない情報が追加される。
櫻井室長は沙綾と飲んでたんだから、沙綾が荒れてたら心配するに決まってるけど、そんなこと聞いたら色々想像しちゃうじゃん。
私がいない時の二人の様子とか。
リビングを通ると、沙綾がソファにもたれかかってすやすやと眠っていた。
肩にはしっかりブランケットがかけられている。
ありがとう、シスコン兄貴。
できれば私のこともちょっとは心配してくれ。
私がせっせと焼き肉を胃に詰め込んでる時に、ここで櫻井室長と沙綾は一緒の時間を過ごしていたんだと思うと、やっぱり落ち込む気持ちはどうしても止められなくて、沙綾を起こさないように、足音を忍ばせてそっとリビングを通り抜けた。
参田さんにはあっという間に見抜かれた私の恋心にも、この鈍感な兄にはちっとも気づかれていないらしい。
「沙綾、どうかしたのか?」
「え、なんで?」
「あんま強くないクセにガンガン飲んでたし、お前、さっき変だったし」
「ちょっと私の友達とモメて……」
「男じゃないだろうな。沙綾に変な男紹介すんなよ」
「……はいはい」
ったく、30にもなってシスコン(沙綾限定)なんだから。
そんなセリフをため息と一緒に噛み殺して、家へ上がった。
「航太も心配してたぞ」
「……」
背中から聞きたくもない情報が追加される。
櫻井室長は沙綾と飲んでたんだから、沙綾が荒れてたら心配するに決まってるけど、そんなこと聞いたら色々想像しちゃうじゃん。
私がいない時の二人の様子とか。
リビングを通ると、沙綾がソファにもたれかかってすやすやと眠っていた。
肩にはしっかりブランケットがかけられている。
ありがとう、シスコン兄貴。
できれば私のこともちょっとは心配してくれ。
私がせっせと焼き肉を胃に詰め込んでる時に、ここで櫻井室長と沙綾は一緒の時間を過ごしていたんだと思うと、やっぱり落ち込む気持ちはどうしても止められなくて、沙綾を起こさないように、足音を忍ばせてそっとリビングを通り抜けた。