甘え下手
「勝手だよね。約束、守れなかったのは私なのにね」

「え?」

「ううん、ごめんなさい。なんでもないの。比奈子ちゃんに話聞いてもらっちゃったし、今日は帰ろうかな」

「え、阿比留さんのこと待ってなくていいんですか……?」

「うん。比奈子ちゃん達の邪魔しちゃ悪いし。大体そんな長く家を空けるわけにいかないし。ちょっとどうかしてたみたい。こんなところまで来るなんて」


淡く自嘲の笑みをこぼす優子さんは陽炎のように儚くて、私ですら大丈夫なのかと心配になっちゃうほどだった。


カチャリと空になったコーヒーカップがソーサーの上に置かれる。

私のコーヒーカップには冷たくなったコーヒーがまだ少し入っている。


話の終わりを感じて、ゴクゴクと冷たい液体を喉に流し込んだ。


「今日私が来たこと、翔馬くんには言わないでくれるかな」

「え……」

「余計な心配かけちゃうから。ホラ、結構心配性なところあるでしょう?」

「はい……」


確かにこんな優子さんを見たら、阿比留さんが心配で仕方なくなっちゃうのは分かるけど。

ホントに黙ってた方がいいのかな……。
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