甘え下手
***

「さっさと告白しちゃえばいいじゃない」


会社のお昼休み、お弁当派の私と同期の秋菜(あきな)は屋上のベンチを陣取っていた。

天気のいい日の外ランチは最高だ。


今頃、櫻井室長は参田さんお気に入りのそば屋さんで食べてたりするのかな。


「簡単にできたらね、六年も片想いしてないからね」

「うーわー、六年か。重いね」

「重いって言わないでよ」

「重い、重い。重すぎてカチカチになっちゃってるんでしょ?」

「……何が?」

「幻想と妄想よ! 恋を美化しすぎて、大切にしすぎて、それが壊れるのが怖いんでしょ?」

「……そうなのかなぁ」


夏の間は暑くて寄りつけなかった屋上のコンクリートの照り返しも、今じゃすっかり落ち着いて秋の風が涼しく髪を揺らす。

お弁当箱を閉じると、青空を見上げて伸びをした。


「でもこの恋が終わっちゃったら怖いって気持ちはあるかも」


片想いが当たり前で、努力をしなくてもたまに家で会えて、優しい言葉をかけてもらえる。

その小さな幸せにすっかり慣れきってしまっているから、これはこれでいいって思ってしまってるのかもしれない。
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