甘え下手
「遅くなってスミマセン。家でご飯作ってきたから遅くなっちゃって。もうご飯食べました?」

「いや……、寝てた」


結構な時間寝ていたらしく、気がつけばすっかり夜になっていた。

寝起きでボーッとした頭でうながされるままダイニングテーブルにつく。


「いっぱい作っちゃったんでおかず持ってきたんですよ。食べれます?」

「……ああ」


えーっと俺は何してたんだっけ?

そうそう桜を見ながら歩いてて、比奈子と夜桜を見に行こうと思って……。


記憶をたどって、ああ、そういえばと面白くもないシーンを思い出す。

チラリとカウンター越しにキッチンに立つ比奈子に目をやれば、ご機嫌な様子でタッパーから鍋に肉じゃがを移している。


夜桜……って感じじゃないか。

時間も時間だし、比奈子が飯持ってきてるし。


「なんか冴えねーな、俺……」


こんな風に誰かと付き合ってその相手の動向が気になるなんて、久しぶりすぎて自分がものすごく幼稚に感じる。
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