甘え下手
判断の是非
優子さんからの連絡が途絶えるということは、俺に安穏な日々が戻ってくることだと信じていた。

その日が来ることを少なからず願っていたはずの俺だから、今の状況は喜ばしいもののはずだった。


本来ならばゆっくりと時間をかけて自分から彼女を突き放すつもりだった。

それが棚ボタ的に向こうから離れられて、拍子抜けしたというのが正しい表現かもしれない。


だけど実際にこうして彼女から連絡を絶たれると、俺によりかかりたいのに我慢してるんじゃないだろうかと心配になってしまう。

こんな暗い依存関係が何年も続いていたんだから、それはいたしかたない話だと俺は思う。


比奈子が櫻井室長の結婚で揺れてるように。

お互いに時間が解決してくれる問題だろう。


自分のことは冷静にそう判断がつくのに、櫻井室長と比奈子が実際に二人でいるところを見ると、そうも思えないのが男の勝手なところだ。


二次会の準備関係なのか、最後の独身生活を楽しんでいるのか、最近やたらと櫻井室長が百瀬家にいる率が高い気がする。

この間のタッパーに詰めた料理も櫻井室長を含めた百瀬家でふるまわれた料理の残りだったことを知って、少なからずムカついた。


「阿比留さん、上がっていきますか?」
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