甘え下手
家族に優子さんの関係を誤解されようと、そんなことはどうでもいい。

べつに会えなくてもいい。


彼女が助かった。

それだけが事実。


病院を出るとはーっと一気に力が抜けた。

やっとまともに呼吸ができる、そんな感じ。


煙草を取り出してライターで火を点ける。

ゆっくりと煙を肺いっぱいに吸い込むと、その気だるさが心地よくて気持ちが落ち着いて行く。


真っ暗な駐車場で自分の車にもたれかかって、星の出ていない夜空を見上げる。

頭が冷静さを取り戻すと、脳裏に鮮やかに浮かぶのはあの子の顔。


そして自分が取った行動の意味を理解して、頭をかち割りたくなる。


優子さんがマンションに現れたのは『助けて』のサイン。

それを見過ごした自分に腹が立ってたのに、それを比奈子の責任にすり替えて八つ当たりした。





――あの人は比奈子ほど強くねーんだよ。
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