甘え下手
「放っておけないのと恋愛感情がイコールなら、私に勝ち目はないかもです……」


しょぼんと上目づかいで見る私に、航太さんはうーんと難しい顔をして見せた。

フォローのしようがないらしい。


「俺が何言っても説得力ないしな」

「私をフった第一人者ですもんね……」


自虐的な冗談を言うと、櫻井室長は目を丸くした。

そしてその後、フッと柔らかい顔で笑った。


「比奈子ちゃん、もう完全に俺のことふっきってるんだな……ってこれ何様発言だよな。だけどそれって阿比留くんのおかげ?」


照れたように笑う櫻井室長に私も可笑しくなって笑った。


「その阿比留さんにもフラれたら私どうしたらいいですか?」

「俺になぐさめられる?」

「まさか。不倫は嫌です」

「だな。じゃあ広哉になぐさめさせよう」

「ええー……。お兄ちゃん?」

「じゃあ、あの子は? 広報の参田くん」


思わぬ名前が出てきてゲッとなった。
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