甘え下手
「離婚は?」

「成立したよ」


皮肉にも優子さんは結果的に新しい扉を開けたのだ。

決して正しいやり方ではなかったのだけれど。


優子さんの『本気』を見て初めて、兄貴も両親も彼女の気持ちと向き合う気になったのだから。

両親的にはそんな嫁を手元に置いておく方がよっぽど世間体に響くと判断したのだろう。


「……彼女と付き合うとか?」

「まさか」


俺が肩をすくめると、仁はどことなくホッとしたようだった。

仁からでさえそう見えるのだから、周りの人間からも同じように見えているのだろうか。


「……向こうは期待してんじゃないの?」

「むしろ俺の家とは関わりたくないだろ。全部終わってスッキリした感じだったよ」

「お前、会ったの?」

「いや、最後に電話で話しただけ。色々迷惑かけたからって」





――『比奈子ちゃんにも謝っておいて』
< 396 / 443 >

この作品をシェア

pagetop