甘え下手
「……ごめんな。沙綾」


姉妹だから当たり前に沙綾と比奈子は似ている。

その面差しに彼女を重ねて、心が痛んだ。


途端に沙綾の瞳にぶわっと涙がこみ上がる。


「もうもうもう。そういうのお姉ちゃんに言えばいいじゃん。悪いって思ってるならせめて謝ってよ」

「俺の声とかもう聞きたくないんじゃねぇ? 電話しても出ないし。謝って気が済むのが俺だけだったら、返って比奈子に悪い」


そう思いながら電話をかけるのを止められないのは俺の未練に違いないのだけれど。

「電話にも出てもらえないって相当ダセェよな」自嘲的にそんなセリフを吐いた俺を、沙綾は「そんなの甘えだよ!」とバッサリ切り捨てた。


「甘えって?」

「阿比留さん、女を追いかけたことないでしょ!」

「……」

「自分は何もしなくても、女の方から寄ってくるもんだと思ってるでしょ!」

「んなことねーよ。俺を何だと思ってんだよ」

「少なくとも別れを切り出されて、その女にすがったことある!?」


沙綾の言ったことは図星だったが、どちらかといえば俺は沙綾こそがそのタイプだと思っていた。
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