甘え下手
男にチヤホヤされて、その我儘さについてこれない男は切り捨てて、すぐ次へ。


言っちゃ悪いけど沙綾ってそんなイメージだ。

だからその沙綾に説教されているってのが、俺の中でずいぶん新鮮だった。


「そんな人生でいいの!?」

「人生って」

「ただ離れてくのを見守ってるだけじゃ、本当に欲しいものが掴めるわけないじゃん!!」

「相手の気持ちは無視して? それって一歩間違えばストーカーじゃん……痛っ!」


揚げ足を取る俺に本気でイラついたらしい沙綾は、俺の背中にグーパンチをくらわせてきた。

地味に痛い。


「欲しいものを欲しいって言えないんだよ……」

「え?」

「ちっちゃい頃、お姉ちゃんがすっごく気に入ってたクマのぬいぐるみがあったの……」

「……」

「私はそれがすごく欲しくて、ていうかその頃はお姉ちゃんが欲しいものがなんでも欲しくて。泣いて喧嘩して最終的にお姉ちゃんに譲ってもらった」


涙声で突然始まった沙綾の昔話に、俺も仁も黙って耳を澄ませてた。
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