甘え下手
夕方に着くようにゆっくりと出てきたのに、初夏の太陽はまだまだ高い。

18時を過ぎようというのに辺りは暗くなる気配すらない。


だけど青いそらと白い波間のコントラストもなかなか見事で、オフシーズンの人のいない海っていうのもなかなかいいものかもしれない。

この景色、ひとり占めできるんだもん。


砂浜を歩いて波打ち際まで行ってみる。

海が近くにない場所で育ったから、こういうのって新鮮だ。


しばらく波打ち際を歩いて海を満喫してから、道路へと上がるアスファルトの階段に腰を下ろして休憩をした。

一緒に来るはずだった阿比留さんも休暇を取っていたはずだけれど、きっと返上して働いてるんだろうな。


海を見つめてボーッとすると考えてるのはいつも同じ。

同じ人のこと。


――『一人で恋愛してるみたい』


さーちゃんに言われたことが今になった耳に痛い。

あの時ハッとしたくせに、結局私今でも一人相撲してるもんなあ。
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